尊過ぎて切ない

人間ではない家族への溺愛

愛猫の 自由を奪った

 

早朝 4時

 

愛猫タマ(仮名)が

 

ゴハン下さい」

「お腹空いた」

と、

 

私の頭を 小突く 時間。

 

本来は…

 

 

 

 

けど、

「その日」は 違った。

 

「タマが おかしい」

と、下の子が 声をかけてきた。

 

 

抱っこされている タマを見たら

足が おかしい。

足の裏を ケガしている。

 

歩けない。

 

朝イチで

動物病院へ 行った。

 

 

 

足の裏のケガは 見なかった 先生。

 

 

なぜなら、

足の付け根を「脱臼」していたから。

複雑に…

 

足の裏のケガ所じゃ ない。

 

 

即 手術。

 

 

 

 

 

「着地に失敗 したんだろう」

「猫には 珍しい手術」 

 

何度も 言われた。

 

 

 

 

タマは

仔猫の頃から 活発で

運動神経が いい。

 

とんでもない距離を 飛ぶ。

 

 

物の少ない

我が家で

6年近く

暮らしている。

 

なんで?

なにで?

 

 

 

 

「何」が 原因か?

思いあたる。

私だけ。

 

 

私の せい。

だから…

 

 

 

 

 

上の子が

家を 出た。

 

空っぽになった

上の子の部屋の

ドアを 開けていた。

 

閉め忘れでは ない。

 

タマが

自由に入れる部屋が増えた。

と、私が 開けていた。

 

 

その部屋に

ひとつだけ

「物」が あった。

 

棚。

 

 

何も 置かれていない

ただの 棚。

 

 

「危ないかなぁ?」

「置いといていいかなぁ?」

 

ひとりで そう思った事を

覚えている。

はっきりと。

 

結果 そのままに した。

 

めんどくさかったわけでは ない。

 

ただ

ただ

「大丈夫だろう」

と、そのままに した。

 

 

それの せい。

それしか ない。

それが原因で 大ケガを させた。

 

 

その棚は 

私ひとりでも

どうにでも出来る 大きさ・重さ。

 

少しでも

気になったのなら

片付ける べきだった。

 

片付けないのなら

ドアを 閉めておけば よかった。

 

 

 

それだけじゃ ない。

 

 

4/4

ケガをしたであろう

「その時」の

「音」を 聞いた。2度。

 

 

時計は 見てない。

 

けど、

確実に「0時」過ぎ。

 

不眠症の私は

ラインを していた。

久しぶりの 相手だった。

 

 

一階に居たら

上で 音が した。

 

大きな 音。2回。

 

「タマが ひとりで運動会してる」

と、

見にも 行かなかった。

 

 

 

棚に 登った。

棚に 足が 挟まった。

パニックになって暴れたら

棚が 傾いた。

倒れずに 元に 戻った。

 

それが 1度目の「音」

 

それでも

挟まったままだったタマは

無理に 降りた。

傾いた棚は 倒れずに また 戻った。

 

2度目の「音」

 

それ以外 考えられない。

 

棚は 倒れて いない。

 

 

 

 

タマは

下の子が 気付くまで 

4時間程も 痛い思いを していた。

 

歩けないのに

大好きな下の子の 部屋まで 行った。

 

隣の部屋まで行くのに

4時間も かかったのかも しれない。

 

 

 

1度目の「音」がした時

見に行っていたら…

 

そもそも

「棚」を 片付けていれば…

 

ドアを 閉めてさえ いれば…

 

 

タラレバを

どんなに言っても

どんなに悔やんでも

どんなに自分を責めても

何にも ならない。

 

 

 

 

手術を お願いして

車に乗り込み

下の子と 泣いた。

 

泣いた所で

何にも ならない。

 

 

「脱臼」

とだけ 頭に残ったけど

複雑に どうこうなっていて

「こうをこうして こうをこうする」

「こう」出来ない時は

「こう」だけを する。

と、

手術の説明があったけど

理解出来ず

「お願いします」

の言葉しか 出ない。

何十回 言っただろう…

 

 

 

2泊の入院後

連れて 帰った。

 

 

広範囲に 毛を剃られ

手術の 大きな 傷。

 

エリカラを

付けられているだけでも ストレスだろう。

 

 

 

手術を しなければならないほどの

大ケガを させてしまった事以上に

頭が 真っ白になったのは

1ヶ月間の 絶対安静。

 

 

2本足で立たせる事は

絶対に ダメ。だと…

 

 

 

猫を?

閉じ込める?

 

 

そんな事が 出来る?

 

 

 

猫は 自由を 好む。

毎日 家中のパトロールを しなければ…

 

 

タマは

3段の 立派なケージを 持っている。

 

1段目の扉は 常に開けていて

1段目で トイレして

2段目で ゴハンを食べ

3段目で くつろぐ。

 

 

 

 

 

 

修理屋さんとか 業者さんとか 来て

玄関や 窓の開け閉めを

家族以外がする時に

絶対に 外に出ないように

ケージに 入れ 扉を 閉める。

 

 

 

ほんの

1時間程でも

「出して 出して」

と、泣き続ける。

 

 

 

1ヶ月間…?

 

猫は ストレスに 弱い。

 

ストレスで

どうにかなってしまうのでは?

 

 

私の せいで…

 

 

 

 

 

 

「外の見える場所に 移動して

      3段目に 居てもらおうか?」

 

 

 

旦那の提案に 救われた。

 

 

壁際のケージ。

1番下。

 

 

そこに閉じ込めた

タマばかりを 想像していた。

 

お先真っ暗。

 

 

 

 

1番外の見える

日当たりの良い

窓際に ケージを移動して

高い位置で 過ごしてもらう事に した。

 

 

 

 

 

ただ

ただ

真っ白な頭の私には 思い付かなかった。

 

出会って約30年間で

1番良い提案をした 旦那。

 

久しぶりに 褒めた。

 

 

 

 

 

 

タマが 退院する前の日

休みもろくになく 激務の旦那が

夜中に帰ってから ケージを 移動する。

 

せめて

ケージを移動するだけで 済むようにと

ケージを置く場所を 確保した。

 

 

ケージを置く場所には

キャットタワーが ある。

 

爪を 研いだり

隠れたり

1番上では 外を見たり 寝たり

最高な 場所。

 

 

高さはあるけど

倒れにくい

重たい キャットタワーを

引きづりながら どかした。

 

ケージは キャットタワーより 大きい。

 

邪魔になる

ベットになるソファーが ビクとも しない。

「バカなの?」って 重さ。

 

 

バカは 私も。

私が 1番の バカ。

私の せいで

元気なタマに 大怪我を させた。

 

元気に フードを食べに 降りて来て

元気に 2階への階段を 登って行った。

 

その後に

どんなに 怖かったか?

どんだけ 痛かったか?

 

私には 想像もつかない目に あった。

私の せいで…

 

 

 

 

無我夢中に

ソファーを 押した。

 

ヘルニアなんて どうでもいい。

 

死に物狂いに

ソファーを 押した。

 

動いた。

 

愛犬ポチ(仮名)の 足腰の為に

敷き詰めている 敷物が ズレた。

 

わずかだけど 

ソファーを 持ち上げる事も 出来た。

 

 

後は

旦那が ケージを

この場所へ 移動してくれる。

 

ケージに入れる

タマの 

ベットや毛布 トイレの準備をして

夕方 仕事へ 行った。

 

 

3週間経った今でも 腰が 痛い。

 

けど、

タマに比べたら なんでもない事。

 

 

 

職場の人が

急に休んだり

帰ったりした時

率先して 代わりを申し出てきた。

 

それは

ポチ・タマに

何かあった時に

堂々と 休みたいから。

 

けど、

自分の性分のせいで 出来ない。

 

手術の日は 休んだ。

 

この日が 休めない位なら 辞める。

 

本当は

看護の為に 休みたかった。

 

「なんだかんだ言って 休みなよ」

と、言ってくれた人も 居た。

 

でも、出来なかった。

 

常に 人手不足の職場を

1ヶ月も 休む事なんて 出来ない。

 

 

 

それに…

タマに ケガをさせる前に

上の子には 引っ越し祝い

下の子には 就職祝い

にと、新しい携帯を 買ってあげたばかり。

 

「お母さんの年収の 半分使ったわ」

と、苦笑いしていた矢先に

動物病院へ

年収の 後半分を 払った。

 

惜しくは ない。

 

周りから

引かれる程

ポチ・タマに 使う。

 

特に 動物病院へ。

 

惜しいなんて

1度も 思った事 ない。

 

 

その為に 仕事を している。

その為に 頑張れる。

 

また 頑張る。

 

 

 

タマは

まだ ケージの中。

 

私が 声をかけると

撫でてもらおうと

ケージに体を 押し付ける。

 

「ごめんね」

と、撫でる。

 

撫でると

グルグル言い出す。

 

 

私のせいで 痛かったのに

私のせいで 怖かったのに

私のせいで 自由を奪われたのに

私のせいなのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

「年齢のせいでの 不調や病気は

 人間もそうだし 仕方のない事。

 だから せめて 私達の 

 うっかりや 不注意や 過信での

 ケガや病気や迷子には

 気を付けて 生活しよう」

 

と、

くどくど言ってたのは 私。

 

 

 

「私の 不注意で

      ケガをさせてしまったんだよ」

って、

タマに 知らせたい。

 

何にも 悪くないのに

ひどい目に あわされた タマ。

 

ほんの少しの時間でも

閉じ込められたら

「出して」と 泣いていた タマ。

 

どうして

そんなに

良い子なの?

 

 

 

 

人間なら

「1ヶ月の 辛抱だから」って

伝えられるのにね。

タマは「なんで?」って

なるよね。

 

と、家族で話した。

 

 

 

だけど、

タマは 理解してるかのように

良い子。

 

連れて帰ってすぐは

狭いケージに入れられて

泣いて ウロウロしてたけど

エリカラがケージにあたり

ろくに動けず おとなしく なった。

 

生きる希望を 無くしたんじゃないのか?

 

申し訳なくて

申し訳なくて

「ダメなお母さんで ごめんね。

 お母さんのせいで ごめんね」

と、謝るしか なかった。

 

 

 

けど、

タマは

ケージの中の 一段のスペースだけで

トイレをして

ゴハンを食べて

外を眺めたり 寝たり。

 

お顔も 今まで通りの 可愛い表情。

 

聞き分けの良さに

さらに 申し訳ない。

 

 

 

 

 

 

 

夜の仕事終わりに

駐車場で 猫を 見る。

おウチの ない子かな?

 

「猫さん」

と、声をかけると 走って行く。

走って行く先は いつも 自販機の方。

 

自販機の横には

自販機用の ビン缶入れ。

だけど、

その付近には 

ゴミも 捨ててある。

 

そこで 何か 食べてる?

そんなには 食べるの無さそう。

あっても 食べちゃダメなヤツ。絶対。

 

けど、

ウチの タマよりも 大きな 猫さん。

帰るおウチが あってくれと 願う。

 

 

タマとの出会いも この職場。

 

 

生後1ヶ月位と 病院で言われた

手のひら ひとつ分に乗る程の

小さいタマは

職場の肥料を食べて 生き延びて いた。

 

 

 

「もう、肥料なんて 食べなくていいよ。

 美味しいゴハンを 食べてね。

 寒くもない。

 暑くもない。

 キレイなお水を いつでも飲んで。

 意地悪なんて 誰もしないよ」

 

まだ 名前のなかったタマに

そう言いながら 連れて帰った。

 

 

ポチ・タマが

この世にオサラバする瞬間まで

安心・安全な 快適な生活を させる。

 

と、心に誓ったのに…

 

安心して 飛び乗った棚は

安全じゃなかった。

 

快適どころか

苦痛の毎日を 送らせて しまっている。

 

 

 

 

申し訳ない。

申し訳ない。

 

 

 

 

 

 

前から 

行きたかったパン屋さんに

パン友と 行く約束を していた。

 

久しぶりの人と

飲みに行く約束を していた。

 

見たかった映画に

一緒に行きたいと 言ってくれる人が 居た。

 

 

 

全て キャンセル。

当然。

私のせいで

ひどい目にあったタマを

閉じ込めて 出掛けるなんて 許されない。

 

 

 

犬猫と 暮らしてない人や

「犬猫」だから…と、割り切っている人には

わかってもらえない事も ある。

 

 

私が仕事を休んだ タマが手術した日の事。

 

「〇〇さんが熱でも出したかと思ったら猫ね」

と、言った人が 居たそう。

 

 

自分の熱なら 休まんわ。

 

 

くるみメープルさんが 辞めてしまい

職場には 信用出来る人が 居ない。

 

 

ポチ・タマへの想いを

職場の人に 理解してもらうつもりも ない。

 

ただ

ただ

可愛くてたまらないタマを

ひどい目にあわせてしまった事が

ただ

ただ

申し訳ない。

 

 

 

偶然に

タマは

私の

誕生日に

ケージから 出れる。

 

 

 

「これ以上 歳を取りたくない」

と、思うようになってから

誕生日が嫌になった。

 

こんなにも

誕生日が待ち遠しいのは 何年ぶりだろう?

 

 

 

 

 

 

頑張ってるタマに「頑張れ」と

お母さんのせいで「ごめん」と

4/4から どれくらい 言っただろう?

 

「ごめんね」は

ずっと 言い続ける。

 

タマどころか

私がこの世にオサラバする時まで。

 

申し訳ない。

申し訳ない。

 

何度謝ろうと

何にも ならない。

 

 

 

不眠症で よかった。

 

一晩中 タマを 見ていられる。

 

 

 

夜は

ひとりでウロウロしていた タマ。

 

キチンと ケージの中で 寝ている。

 

寝るしかないもんね。

 

 

 

 

これから一生

プレゼントは いらない。

 

 

タマが

また

ひとり運動会が 出来ますように…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お利口過ぎて

余計 辛いよ。

 

ごめんね、みーちゃん。